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2013年02月28日

『ナマコを歩く』の英文版が刊行されました!

『ナマコを歩く』の英文版が刊行されました!
 本日、拙著『ナマコを歩くー現場から考える生物多様性と文化多様性』(新泉社、2010年5月)の増補英文版、Conserving Biodiversity for Cultural Diversity: A Multi-sited Ethnography of Sea Cucumber Wars (Tokai University Press, pp.284) が刊行されました。これは、日本学術振興会の「研究成果公開促進費ー学術図書」という研究助成(出版助成)を頂戴してのものです。出版をひきうけてくださった東海大学出版会に感謝いたします。
 これまでにも英文で論文を発表してきたとはいえ、日本語を英語にするという作業は、想像以上に大変でした。当然ながら、日本語でナマコ食文化を論じる際には注意することもなかったことですが、漢字を解さない読者層にむけての執筆ということで、日本語での執筆とは180度ことなる戦略が必要となりました。たとえば、中国語はピンインで、韓国語は韓国で一般的なローマ字表記を採用しました。料理名や書籍名など、漢字を使用することでイメージが豊かになるため、ローマ字表記の違和感はいなめませんが、いたしかたありません。
 また、日本語版は学界のみならず、幅広い読者を想定してたのに対し、英文版の読者は学界関係者を想定せざるをえません。そのため、よりアカデミックな議論を心がけたつもりですが、自分の不勉強を露呈する結果となりました。この反省は、今後の研究の糧としたいと存じます。それでも、研究者だけではなく、わたしの研究の原点であるフィリピンの友人たちに読んでもらえることをうれしく思っています。
 日本語刊行のあと、中文版が2011年に台北の群學出版から『海參戰役:從在地思考生物多樣性與文化多樣性』として出版されました。中国料理の高級素材であるナマコをあつかった以上、中国食文化圏で、批判をふくめ、わたしの作品がどのように評価されるか興味あるところです。のみならず、ナマコというマニアックな動物のケース・スタディを越え、拙著であつかった「文化多様性の保護」という課題については、英文版の出版によって、より幅広い議論が可能になると期待しています。
 ナマコ研究はライフワークではありますが、中間報告としての、まとまった成果公開は、この英文版で一時休止となります。また、10年後ぐらいに、あらたな視点からナマコ研究のその後を問うてみたいと考えています(その頃、紙媒体の書物は存在しているのでしょうか)。
 みなさまからのご批判をおまちしています。


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Posted by 赤嶺 淳 at 16:09│Comments(1)研究成果
この記事へのコメント
フジカケです。素敵なページにたどりつきました~。本を出版されたのですね。早速購入して、読んでみます! 

研究室ブログの問合せメールが送れなかったので、ここに書きました。財団のニューズレターに原稿を頂戴したのは、調べてみたらなんと1999年でした。ご無沙汰してしまってすみません。

https://www.facebook.com/tfujikake
Posted by 藤掛敏也 at 2013年03月23日 21:11
 
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