2024年のおわりに

赤嶺 淳

2024年12月31日 13:05

今年もあとわずかになりました。本格的な「コロナ明け」元年となった今年は、あたらしい共同研究プロジェクトがはじまったこともあって、フィールドワークを再開した年となりました。

とはいえ・・・・・・忘れ物も多く、さまざまな場面で「あれれ?」っていうことも少なくなく、フィールドワークの勘をとりもどすには、当分のあいだ、リハビリが必要なようです。

捕鯨問題群の研究に本格的に着手したのが2014年4月ということもあり、ちょうど10年となりました。「石のうえにも3年」ではありませんが、いろんなことがつながってきたように思います。また、つぎの研究課題も見えてきました。

そんな過渡期ともいえる今年は、国内で25日・海外で56日のフィールドワークをおこないました。面白いことに、テーマでいえば捕鯨問題関係が56日、油脂関係が25日という計算になります。

捕鯨問題関係では、なんといっても念願だったフェロー諸島を訪問できたことが、自分のなかでは大きな出来事となりました(写真は同諸島北東部にある、同諸島第2の都市クラクスヴィーク=Klaksvíkのフィヨルド)。

IWC(国際捕鯨委員会)の定める生存捕鯨(subsistence whaling)でもなく、商業捕鯨(commercial whaling)でもなく、第3の捕鯨としての「地域捕鯨」(communal whaling)の現代的意義を追求していきたいと思います。



油脂関係ではマレーシアとフィリピンを訪れました。こちらは、1988年から1994年まで鶴見良行さんが組織した「ヤシ研究会」(ヤシ研)に参加させてもらって以来の調査でした。ともに同研究会で学んだ加治佐敬さん(京都大学大学院農学研究科)との、ふたり旅でした。

ヤシ研以来、それぞれ別の道を歩んできたわけですが、そんな環境下で30年ぶりに共同調査をおこなえたことは奇遇です。おなじ景観を異なる眼でみつめ、異なる角度から分析しあうことは、想像以上に楽しく、刺激的なものでした。

2024年に活字となったもは、以下のとおりです。現時点で来年に3篇の活字化が予定されているとはいえ、せめてあと1本は発表すべきであったと反省しかりです。来年は、つぎの課題に向きあうためにも、まずは、これまでの捕鯨問題群研究のまとめをおこなう1年(新書&単行本)への挑戦で果たすつもりです。

論文:
・「日本捕鯨史研究の課題と展望——あらたな母船式捕鯨業の船出を契機として」, 『社会科学』54(3): 1-27. https://doi.org/10.14988/0002000773

共著論文:
・湯浅俊介,辛承理,赤嶺淳,「韓半島東南部における捕鯨の記録①——韓海に君臨した東洋捕鯨株式会社」,『一橋社会科学』16: 1-28. https://doi.org/10.15057/82339
・湯浅俊介,辛承理,赤嶺淳,「韓半島東南部における捕鯨の記録②——韓国捕鯨の「挫折」と捕鯨政治」,『一橋社会科学』16: 29-57. https://doi.org/10.15057/82340

本:
・「マーガリンを食べながら——鯨油なき時代の油脂」,湯澤規子・伊丹一浩・藤原辰史編,『入門 食と農の人文学』,ミネルヴァ書房,129-140頁,ISBN: 978-4-623-09719-7。

そのほか:
・「地域あっての地域捕鯨——フェロー諸島のキリスト教化と相互扶助」, 『Ocean Newsletter』584: 4-5.
・「文明と未開——フェロー諸島における地域捕鯨の意義」, 『GGTニュースレター』128: 2-4.
・「ナマコと白檀」,棚橋訓編集代表,『オセアニア文化事典』,丸善出版,267-277頁。
・「好きこそものの上手なれ」,『きわ』1(1): 1-2.

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